絵画:アーサー・ラッカム 「ケンジントン公園のピーター・パン」10
Arthur Rackham, "Peter Pan in Kensington Gardens" 10

MIDI:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より 「こんぺい糖の踊り」
P.I.Tchaikovsky, Dance of the Sugar-Plum Fairy from "The Nutcracker".





 
おはなし10

  公園へと飛んだピーター・パンは、赤ん坊御殿 (Baby's Palace)と蛇形池の間の芝生に、心も軽く降り立ちました。
 人間だったことなんて忘れて、以前と同じように、体も形もすっかり鳥だと思い込んでいました。だからハエをつかまえそこないましたが、それが手でつかまえようとしたからだなんて気付きませんでした。鳥が何かを手でつかまえるなんてありえないのに。
 それでもピーターは、今が、人間たちのいない、公園の「しめだし時間」であることに気付きました。というのは、妖精たちが大勢そこらじゅうにいたからです。
 けれど妖精たちはみんな、ご飯の支度をしたり水をくみにいったりと、忙しくて、ピーターには気付きませんでした。