絵画:アーサー・ラッカム 「ケンジントン公園のピーター・パン」11
Arthur Rackham, "Peter Pan in Kensington Gardens" 11
MIDI:モーツァルト ピアノソナタ イ長調 K331 第1楽章
W.A.Mozart,
Piano Sonata in A, K.331, Ist Mvt.
おはなし11
ピーターはその夜、小鳥だった時と同じように、公園のブナの木にとまって寝ました。はじめのうちは、枝から落ちないように平均をとるのがたいへんでしたが、じきにこつを思い出して、眠りこみました。
ところが寒さに震えて、夜明け前に目を覚ましてしまいました。
「こんなに寒い夜に外にいるの、ぼく、はじめてだもの」
本当は鳥だった頃には、もっと寒い夜に外にいたことだってあったのです。でも、鳥なら暖かいと思う夜でも、寝まき一枚の赤ちゃんにはとても寒い夜だったのです。
突然大きな音がしてピーターはびっくりしました。それは自分のくしゃみの音でしたが、自分を鳥だと思っているピーターには分かりませんでした。しばらくすると何かしてもらいたくなってきましたが、それが何か思い出せませんでした。それはお母さんに鼻をかませてもらうことだったのですが、ピーターはそれが思い出せなくて、物知りの妖精に聞いてみることにしました。
妖精と小鳥たちは仲が悪く、しょっちゅう小ぜり合いをやっていましたが、それでも礼儀正しくものを尋ねれば、きちんと答えてくれるのです。
ところが、礼儀正しく尋ねようとしたのに、妖精たちはピーターを見るなり一目散に逃げてしまいました。これには、ピーターはすっかり腹を立ててしまいました。