アーサー・ラッカム 「クリスマス・キャロル」7
MIDI:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より グラン・パ・ド・ドゥ コーダ

Arthur Rackham, "A Christmas Carol"7.
MIDI : Pyotr Ilich Tchaikovsky, Grand Pas de Deux Coda feom "The Nutcracker"



おはなし7

 父親は、クリスマスのおもちゃやプレゼントをたくさん抱えた配達夫ですを従えていました。
止める間もなく、配達夫は、わめき、もがき、突進してくる子どもたちに取り囲まれました。プレゼントを見つけるたびに、子ども達はみんな、わあっと叫びました。

 時間がたち、大騒ぎをしていた子どもたちも、寝る時間になり、次々とベッドへと行ってしまい、その場にはこの家の主人と妻と娘の三人になりました。主人は妻と向かい合い、娘をいかにもいとおしげに自分にもたれさせています。
 もしかしたら、こんな娘が自分をお父さんと呼んでくれたかもしれないのだとスクルージは思い、目頭が熱くなってきました。
「ねえ」
 主人はにこやかに妻に話しかけました。
「今日はお前の昔の友だちを見かけたよ」
「あら、誰かしら…?」
「あててごらん」
「さあ、分からないわ」
 主人が笑った途端、妻も笑い出しました。
「あ、分かったわ。スクルージさんね」
「その通り、スクルージさんだよ。あそこの事務所の前を通りかかったら、窓が開いていてロウソクがともっていたから、知らんぷりはできなかったんだよ。なんでも相棒の経営者が臨終だとか聞いた。スクルージさんは一人ぼっちで座っていたよ。この世でたった一人ぼっちなんだ」

「やめてくれ!」スクルージは叫びました。
「私をよそへ連れて行ってください!」
「これは過去にあったことの幻だと言ったはずですよ。あれが事実だからといって、私を責めるのは間違いですよ」
「よそへ連れていってください!とてもがまんできない!」
 そう言いながら精霊の顔を見ると、その顔は今までに見てきたさまざまな顔を、奇妙な具合につなぎ合わせたようなのです。思い出の顔、顔。それを見て、スクルージは逃れようと、もがきました。
 そしていつの間にか、自分の寝室にいることに気付きました。そして深く深く眠りました。