アーサー・ラッカム 「クリスマス・キャロル」3
MIDI:ベートーヴェン 交響曲第7番 第2楽章

Arthur Rackham, "A Christmas Carol" 3.
MIDI : L.v.Beethoven, Symphony No.7 in A, Op.92 2rd Mvt,



おはなし3

 スクルージは、なんとなく落ち着かない気持ちで部屋を歩き回った後、椅子に座りました。そしてたまたま今は使われていないベルに目が行きました。すると突然そのベルが大きな音で鳴り始め、そしてそれに伝染したように家中のベルが鳴り始めました。
 それは1分か30秒ほどでしたが、スクルージには1時間のように思われました。
 そして鳴り出した時と同じように、全部のベルが一斉に鳴りやみました。
 それからずっと下の方から、じゃらじゃらという音が響いてきました。まるで誰かが重たい鎖を引きずって歩いているように。その音は次第に上へと上がっていき、スクルージの部屋の戸口まできました。
「これもまやかしだ。わしは認めんぞ」
 スクルージがそういった時、“それ”はなんのためらいもなくドアを通り抜け、部屋に入り、目の前に立ちました。
 それは見覚えのある顔でした。7年前に死んだ、会社の共同経営者マーレイだったのです。
 マーレイは生前と同じ姿をしていましたが、腰に重たい鎖を巻きつけていました。そしてその鎖は、鋼鉄を金庫や鍵、南京錠、帳簿、証書、重たい財布の語りにしてつくりあげたものでした。
「おい!わしに何の用だ」スクルージは勇気を振るい言いました。
「用ならどっさりある!」
 答えた幽霊の声は、まさしくあのマーレイのものでした。
「あんたはどうして、そんな鎖につながれているんだ」
「これは生きていた頃に徐々に身に着けたものだ。この形、お前も見覚えがあるだろう?わしは自らの意志でこの鎖を身につけていったんだ。そう、7年前のクリスマスは、お前の鎖もわしと同じくらいだった。けれどお前はそれからもずっと、せっせと鎖を編んできたから、今じゃものすごい重さになっているぞ」