アーサー・ラッカム 「クリスマス・キャロル」12
MIDI:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より 「雪のワルツ」
Arthur Rackham,
"A Christmas Carol"12. MIDI : Pyotr Ilich Tchaikovsky, Coffee (Arabian Dance)
feom "The Nutcracker".
おはなし12
そう、それはスクルージのベッドの柱でした。しかも自分のベッド、自分の部屋でした。そして何より嬉しいのは、これから先の時間は自分のものであり、自分の手でやり直しがきくということでした。 ベッドのカーテンはありました。先ほど見せられた未来の幻は、消すことができるかもしれないのです。 「ありがとう、ジェイコブ・マーレイ!これからは、過去、現在、未来の精霊と共に生きていくよ。この精霊たちは、私の心の中に住み、励ましてくれるだろう」 スクルージは生きているのが嬉しくてたまりませんでした。それにしても、どのくらいの時間が経ったのだろう?教会の鐘が鳴り始めました。スクルージは窓を開けました。外は明るい快晴でした。スクルージの心と同じように。 「今日は何日だね?」 通りがかりの少年に尋ねると、少年は不思議そうな顔をしました。 「今日が何日だって?決まってるじゃないか。クリスマスだよ」 驚いたことに、一晩しか経っていなかったのです。嬉しくなったスクルージは少年に続けて言いました。 「坊や、頼まれごとをしてくれないか?ここから二本目の通りに肉屋があるから、店で一番大きな七面鳥を買ってきてほしいんだ。お駄賃ははずむよ」 その七面鳥は、事務員のボブ・クラチットの家に届けさせるつもりでした。ティム坊やの2倍はありそうな、大きな七面鳥でした。 スクルージは外に出ました。歩いている途中、昨夜、貧民のための寄付を求めに来た紳士と出会い、法外な寄付を申し出ました。紳士の驚きながらも、スクルージに深く感謝しました。 そしてスクルージは甥の家の前に来ました。何度もためらいましたが、思い切って入ると「やあ、フレッド!」と声をかけました。 甥夫婦の驚いたこと。 「ひゃあ、誰なんです?」 「私だよ。伯父のスクルージだ。ご馳走になりに来たんだ。入れてくれるかい?」 入れてくれるかい?だなんて、その後はスクルージの腕がもげてしまいそうなくらいの握手ぜめでした。5分もするとわが家同様にくつろいでいました。 そして甥の友人たちも来て、現在のクリスマスの精霊が見せてくれた通り、素敵なパーティ、素敵なゲームが始まりました。違ったのは、そこにスクルージがいたということでした。
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