アーサー・ラッカム 「クリスマス・キャロル」13
MIDI:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より フィナーレ

Arthur Rackham, "A Christmas Carol"13.
MIDI : Pyotr Ilich Tchaikovsky, Finale feom "The Nutcracker".


最終回

 クリスマスの次の日、スクルージはわざと早々と事務所に出かけました。真っ先に出かけていってボブ・クラチットの遅刻をつかまえてやろうという計画でした。
 そしてその通りになりました。哀れなボブはきっかり18分30秒、遅刻してしまったのです。ボブは入り口に入る前に、帽子を脱ぎ、マフラーをはずして、あっという間に席について、遅れを取り戻そうとしました。
「おい、こんな時間にやってきてどういうつもりだ!」
 スクルージはできるだけ、いつも通りの声を出そうとしながら、かみつくように言いました。
「申し訳ございません。昨日は羽目をはずしすぎまして。もう二度といたしません」
「いいか。これだけは言っておこう。こんなことはこれ以上我慢ならん。そこでだ」
 スクルージはそう言ってボブのチョッキを一押ししました。ボブはぐらっとよろけ、後戻りしました。
「そこでだ。君の給料をあげることにした!」
 ボブは一瞬、主人が狂ったと思いました。
「クリスマスおめでとう!ボブ」
 そう言いながらスクルージが、ボブの背中を叩いたので、ようやく本気だと分かりました。

「これまで何年もの埋め合わせとして、今年のクリスマスはうんとめでたいものにしようじゃないか。君の給料をあげてやるぞ。君の苦しい家族の力になろう。石炭を買っておいで。もっと部屋を暖かくして、今日の午後は熱いパンチ酒を飲みながら、そのことを話し合おう」

 スクルージはこの口約束を全部、いいえ、それ以上のことをやりました。ティム坊やは死なないですみました。スクルージが第二の父さんになってくれました。素敵な町ロンドンで、いえ世界中の町で、スクルージは誰にも負けないほどの、よい友人、よい主人、よい人間になりました。

 そして、ちゃんとしたクリスマスの祝い方を知っている人がいれば、それはスクルージさんだよと言われるようになりました。私たちもそんなふうに言われてみたいですね。どうかそうなりますように!
 そこでティム坊やの言葉を借りてみます。

 God bless Us, Every One!
 ぼくたちみんなに、神様の祝福がありますように!