絵画:アーサー・ラッカム 「ケンジントン公園のピーター・パン」47
Arthur Rackham, "Peter Pan in Kensington Gardens" 47

MIDI:シューベルト 「楽興の時」 第3番 op.94-4
Franz Schubert, Moment Musical, Op.94, No.4.




 
おはなし47

 ピーター・パンはまだメイミーのことを忘れられないでいましたが、以前と同じように陽気になりました。愉快に毎日を過ごしていましたが、それでも以前自分が人間だったというかすかな記憶が残っていて、そのために、家ツバメが島に来ると特に親切にしていました。というのは、家ツバメという鳥は幼くして死んだ子どもの魂の化身だからでした。
 家ツバメは人間だった時の住んでいた家の軒下に必ず巣を作り、時には子ども部屋に入りたそうにしています。きっとこのせいでピーターは、家ツバメが鳥の中で一番好きなのでしょう。

 ところであの小さい家はどうなったのでしょう。
 今では妖精たちは、舞踏会の開かれない普通の夜は毎晩、小さな家を建てました。公園の中で迷子になっている、人間の子どもがいるといけないからです。そしてピーターが迷子を探してまわり、もし見つけたら、ヤギに乗せて小さな家に連れていきます。迷子は翌朝目が覚めると家の中にいるといて、起き上がって外に出ると、家を見ることができました。
 妖精たちは、ただきれいだからという理由で家を建てていましたが、ピーターはメイミーの思い出のために、ヤギに乗って見回っているのです。

 けれど、公園の木々の間に小さな家灯がきらきら輝いているからといって、「しめだし時間」の後まで公園に残っていても大丈夫だと考えてはいけません。
 妖精の中でもよくない連中が、たまたまその夜うろついているかもしれません。