絵画:アーサー・ラッカム 「ケンジントン公園のピーター・パン」21
Arthur Rackham, "Peter Pan in Kensington Gardens" 21

MIDI:ホルスト 『惑星』より 木星(ジュピター)
Gustav Holst : Jupiter from "The Planets"





 
おはなし21

 ピーターの舟は進み、橋の下をくぐるとケンジントン公園が見えてきました。
 そしていざ上陸しようとすると、妖精たちが岸に並び、金切り声をあげて、「しめだし時間」はとっくにすぎたぞ!あっちへ行ってしまえ!と、邪魔をするのです。中には、公園に来た子どもが残した、小さな矢をかまえているものもいます。
 ピーターは自分は普通の人間ではなく、みんなに迷惑をかけるつもりもなく、友達になりにきたんだと説明しました。ただし、立ち去るつもりはないし、そっちが自分に悪さをするつもりなら、ただじゃおかないぞと、大胆にも岸におりました。
 妖精たちは、やっちまえとばかりにピーターを取り囲みましたが、女の妖精たちがそれを止めました。ピーターの舟の帆が赤ちゃんのねまきでできていることに気付いたからです。それを知った途端、ピーターがかわいくてたまらなくなり、自分たちのひざが小さすぎて抱っこができないことを嘆くしまつでした。
 このありさまを見ると、さすがに男の妖精たちも武器をおさめると、丁寧にピーターを妖精の女王のところまで案内しました。
 そして女王はピーターに、「しめだし時間」をすぎても公園にとどまって差し支えないという特別許可そ出してくれたのです。