Masquerade

Virgilio Tojetti 「仮面舞踏会」
Virgilio Tojetti, The Masquerade, 1890.



コーラス
仮面舞踏会!
仮面たちの集会
仮面舞踏会!
顔を隠そう
誰にも見つからないように!
仮面舞踏会!
色とりどりの仮面たち!
仮面舞踏会!
さあ 見回してごらん
あなたの後ろに もう一つ仮面が隠れてる!

紫色の火花 褐色のしぶき
道化と王様
悪鬼とまぬけ
緑と黒
女王様と司祭様
口紅の跡
獣の顔

仮面たち!
変わりばんこに お乗りなさい
恐ろしい速さでまわるメリーゴーランドに

金色の目
青い太股
本当が間違い
誰が誰?
笑う唇
まわる夜会服
ハートのエース
道化の仮面

仮面たち
思いきり浸り 楽しんで
呑まれてしまうまで
光に 音に

クリスティーヌ・ラウル
けれど 仮面には何て呼びかけるの?

コーラス
仮面舞踏会!
にやにや笑う黄色の仮面
ぐるぐる回る赤の仮面
仮面舞踏会!
心ゆくまで楽しんで
見世物に仰天しよう!

仮面舞踏会!
燃える眼差し
振り返る人たち
仮面舞踏会!
立ち止まって 見てごらん
あなたのまわりは 笑う仮面の海だ!

仮面舞踏会!
影が飛び交い
嘘が息づく
仮面舞踏会!
友だちをあざむいても
誰もあなただと分からない!

仮面舞踏会!
流し目の酒神――
追いかけてくる瞳――
仮面舞踏会!
逃げて、隠れて
けれど仮面はまだ君を追いかけてくる!

仮面舞踏会!
好色な流し目 凝視する瞳
仮面舞踏会!
走って 隠れて
けれど 仮面はまだあなたをを追いかける!

ジリー
なんて夜でしょう!

メグ
なんてたくさんの人たち!

アンドレ
楽しもうじゃないか!

フィルマン
自慢してくれ!
何もかも最高だ!

カルロッタ
見て!すごい眺めね!

メグ・ジリー
恐怖はもはや過去のもの!

アンドレ・フィルマン
3ヶ月たった

ピアンジ
もう安心!

カルロッタ
良かったわ

フィルマン
喜びに満ちた平和な三ヶ月!

メグ・ジリー
これでようやく一息!

カルロッタ
もう手紙も来ない!

ピアンジ
もう亡霊も現れない!

ジリー
健康を祈って乾杯!

アンドレ・フィルマン
乾杯!
素晴らしい1年に
ここにいる友人諸君に!


ピアンジ・カルロッタ
永遠の輝きを祈って乾杯!

アンドレ・フィルマン
なんと素晴らしい解放感!

ジリー
そして素晴らしい仮面舞踏会!

クリスティーヌ
忘れないで
秘密の婚約よ
見て あなたの未来の花嫁を
それだけを考えて

ラウル
けれど どうして秘密なんだい?
なぜ 隠さなければならない?
君は約束してくれたのに

クリスティーヌ
だめよ ラウル やめてちょうだい
人に見られるわ

ラウル
見られたってかまわない
これは婚約だよ 犯罪じゃない
クリスティーヌ 君は何を恐れているんだ?

クリスティーヌ
喧嘩はやめましょう

ラウル
喧嘩はやめよう

クリスティーヌ
お願い 内緒に

ラウル
僕ははただ

クリスティーヌ
あなたもいずれ

二人
きっと理解する



ジャン・ベロー 「仮面舞踏会へ」
Jean Béraud, Avant Le Bal Masqué.



全員
仮面舞踏会!
仮面たちの集会
仮面舞踏会!
顔を隠そう
誰にも見つからないように!

仮面舞踏会!
色とりどりの仮面たち!
仮面舞踏会!
さあ 見回してごらん
あなたの後ろに もう一つ仮面が隠れてる!

仮面舞踏会!
燃える眼差し
振り返る人たち
仮面舞踏会!
立ち止まって 見てごらん
あなたのまわりは 笑う仮面の海だ!

仮面舞踏会!
にやにや笑う黄色の仮面
ぐるぐる回る赤の仮面
仮面舞踏会!
心ゆくまで楽しんで
見世物に仰天しよう!

ファントム
諸君 なぜ そんなに静まりかえっているのかね?
私があのまま永遠に 消えたとでも思っていたのか?
寂しかっただろう?
私は君たちのためにオペラを書いた

ここに完成した譜面がある
『ドン・ファンの勝利』だ!
君たちに心からの挨拶をおくる
稽古を始める前に いくつか指示を出しておこう

カルロッタは 演技を学ぶべきだ
いつものように 気取って 舞台を歩きまわるのではだめだ
ドン・ファンは体重を落とすように
ピアンジの年齢で肥満は 健康によくない
そして支配人たちは心得ておけ
君達の居場所は事務所だ 劇場ではない

そして我らがスター クリスティーヌ・ダーエ

彼女が最善を尽くすのは疑いもない
たしかに美声にも恵まれている
だが分かっているはずだ
より上を目指すのなら さらに学ばなければならない
誇りがあるのなら 私の元へ戻るべきだ
彼女の師の元へ…

お前を縛る鎖は まだ私が握っている
お前は私のものだ!


エドゥアール・マネ 「オペラ座の仮面舞踏会」
Edouard Manet: Masked Ball at the Opera, 1873.