絵画:アーサー・ラッカム 『マザー・グース』より 「みみをすませ みみをすませ」
MIDI:グリーグ ペールギュント第1組曲より  「山の魔王の宮殿にて」

Arthur Rackham, "Hark Hark the Dogs Do Bark" from 'Nursery Rhymes'.
MIDI : Edvard Grieg, Peer Gynt Suite No.1, Op.46 "In the Hall of the Mountain King".




 Hark hark the dogs do bark
 The beggars are coming to town
 Some in rags and some in tags
 And one in a velvet gown.

  みみをすませ みみをすませ
  たしかにいぬがほえている
 こじきがまちへやってくる
  ぼろをまとったやつら
  つづれひきずったやつら
 そのなかにだだひとり
 ビロードのガウンをきてるやつ
                     (谷川 俊太郎 訳)



 この唄の、乞食がちが大勢街にやってくるとは、どんなことでしょうか?
 15世紀から16世紀にかけてのイギリスでは、羊毛で利益を得るために、畑であったところをヒツジ用の牧草地へと変えました。それで困ったのが、畑を耕し働いていた小作人たちです。
 職を失い、住むところを失った彼らは浮浪者となって、全国を放浪するようになりました。けれど道中は安全ではなかったため、集団で放浪するようになります。
 そんな浮浪者集団が、自分の街にやってきたら、街の人々にはさぞ脅威だったでしょう。
 また、この唄は、17世紀にオランダから来て王になったウィリアム三世と、彼に付き従ったオランダ人の家臣のことを揶揄したものだという説もあります。当時のイギリス人は、彼らをさけずみ、乞食と呼び、「ビロードのガウンを着た乞食」とは、ウィリアム三世なのだそうです。